もじもじ皇子と広い背中3
もじもじ皇子にだって悲しくて泣いちゃうことだってあるよね!
※ともきの憂さ晴らしで書いちゃいましたw
・騎士候補年上ジノ×皇子ルル
・読み切りなので1・2を読んでいなくても問題ありません。
もじもじ皇子と広い背中3 Lacrima
16の誕生日を境に公の場に出るようになったルルーシュ皇子はその美貌ゆえ、国民から圧倒的な人気を得ていた。それだけではなく皇帝や高位皇族からも愛情をたっぷりと受けている皇子はさぞ幸せだろうと、誰もが思っている。
けれどどんなに恵まれていようと、他人には知り得ない悲しみや辛さがあるのは普通の人と変わりはない。
「ルルーシュ様、入りますよ?」
形だけのノックをして、ジノは皇子の精緻な飾りが施された寝室の扉を開ける。
大きな天蓋付きのベッドには皇子が細い身体をうつ伏せに横たえていた。
皇子はジノが入ってきても顔を上げることもせず、シーツの海に顔を埋めたまま動かない。
最愛の主が寝入っているわけではないことはジノにはわかっていた。
紗の天蓋をそっと捲り、ベッドに腰掛ける。
紗の天蓋をそっと捲り、ベッドに腰掛ける。
「ルルーシュ様、よく頑張りましたね。」
大きな手でそっと艶やかな黒髪を撫でるが返事は返ってこない。
これはレベル4だなとジノは分析した。
さてどうしようかと思案していると、くぐもった小さな声が聞こえてきた。
「ちっとも頑張ってなんかない。」
「そうですか?私には頑張っているように見えましたよ。本当は人前に出るの凄く嫌いなのにクロヴィス殿下の顔を立てるために式典の挨拶を立派になさったじゃないですか。あの場にいた誰もがルルーシュ様のお声に耳を傾け、凛とした姿に目を奪われておりましたよ。」
「そんなことは皇族として出来て当たり前のことだ。一々褒められることなんかじゃない。それなのに俺は、公務以外ではいつまでたってもお前の背中に隠れることしかできない。俺がこんなだからお前も母上も俺のせいで笑われるんだ。」
大方心ない嫉妬に駆られた皇族の誰かか貴族に何か言われたのだろう。
皇子は人見知りだが、決して泣き虫ではないし、人に何かを言われたくらいで泣くタイプではない。しかし自分のことは何を言われても気にしないが、ジノや家族のことを悪く言われるのには耐えられないのだ。その原因が己にあると思えば更に激しく自分を責める。
上等な絹のシャツに包まれた華奢な肩が小刻みに揺れているのを背中を撫でていた手のひらから感じたジノは急いでその震える身体を自分の方へと横向きに動かした。
案の定柔らかなミルク色の頬には悲しみの雫が零れている。
「ルルーシュ様は出来て当たり前のことなんて何一つとしてないことを御存知ないのですか?」
溢れ出る涙を人差し指で拭いながらジノが問い掛けると、どういうことだと澄んだ紫色の瞳が瞬いた。
「人は成長するにつれて色々なことを期待されますよね。皇子の貴方は特にそうでしょう。でも皆何も持たずに生まれてくるのですよ?一人では何もできずに。そうして一つ一つ出来ることが増えていく。始めはそのことを褒められますよね。“よく出来たね”と。しかしそれもいつの間にか出来て当たり前、出来ないことがいけないことだと責められるし、誰よりも自分が自分を責めてしまうんですよね。でも出来て当たり前だなんて、誰が言えるでしょうか。どんなことだって行動したことは褒めるに値するものなんですよ。」
シーツがぐっしょりと濡れてしまうくらい涙を流している皇子の白い手をとり、その滑らかな甲にそっと唇を落とす。
「あなたが私やご家族のことを想って、表舞台に立とうとして下さっていることもわかっておりますとも。例え人が何と言おうと貴方は私の誇り、最高の主です。」
モゾリと動いた細い身体をタイミングを逃さずジノはすかさずぎゅっと抱きしめる。
「頑張っているルルーシュ様も大好きですが、そのままのルルーシュ様のことも大好きですよ。ゆっくりでいいじゃないですか。誰にだって苦手なことはあります。私がいつまでも傍におりますから、もう悲しい涙はいらないですよ。ご自分を責めるのはやめて下さいね。」
ジノの大きな体に包まれて気が済むまで涙を流した皇子はしばらくすると目元を赤くしながらも小さく微笑んだ。ジノはその笑顔を見て安心したように心からの笑みを返した。
そしてポケットから小さな包み紙を取り出し、包装紙を丁寧に剥がして皇子の口に放り込んだ。
皇族たる者、人から与えられた食べ物には注意を払わなければならないと教えられているのだが、皇子がジノに警戒する理由などあるはずもなく(むしろジノを疑うならば世界中の人間が信用できないことになる)、親鳥に餌を与えられる雛のように素直に口を開いて放り込まれた何かを租借した。
その何かの正体は口に入れられた瞬間に理解できた。
口いっぱいに広がる甘く蕩けるものは、皇子が幼い頃からお気に入りのチョコレート。
「涙には甘いものが効きますから。」
そう言って空色の瞳を優しく細めるジノの大きな体に皇子は勢いよく抱きついた。
「人の体温も効く。」
「そうでしたね。」
ジノは溶けたチョコレートのように甘く皇子の華奢な身体を抱き締め続けた。
涙が乾くまでそう時間はかからないだろう。
ルルを泣きやませられるのはジノジノだけですw
広い胸の中で思いきり泣けばいいさ!
ジノのポッケはルル専用四次元ポケット。
涙が乾くまでそう時間はかからないだろう。
ルルを泣きやませられるのはジノジノだけですw
広い胸の中で思いきり泣けばいいさ!
ジノのポッケはルル専用四次元ポケット。
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