枢木さんのドヤ顔で覚醒すると、妙にそのあと晴れやかな気持ちになれますよ!
ともきと同じく目覚めが悪い方はぜひ(笑)
でも私はもう二度とやらないw多分二度めからはイラっとくるだろうから☆
たくさんの拍手をありがとうございます!
いつもこれはないだろう・・・と自分で引くお話でたくさん拍手を頂けるので一体どうしたものかとも笑ってしまいますが(*^_^*)嬉しいですv
では、続きを。
もう少し続きます!
・ゼロレク後
・ナナリー厳しめ
・ナナリーには救いなし
※残虐表現あり
THE CRUEL STORY 中編
完璧な腕のコントロールで的確な場所に落とされた火は、瞬く間に地面に散らばる彼の『欠片』に燃え移っていく。
「どうして・・・。どうしてぇぇえええ!!」
どうしてそんな酷いことをするの。
髪を振り乱し泣き叫ぶナナリーは、無力だった。
「いやああああああ!!お兄さまぁぁぁぁ・・・」
澄み渡る青空によく似合う爽やかな風に乗ってナナリーの元へ届いたのは、肉の焼ける、胃の底から吐き気が込み上げてくる匂い。
人々の憎しみさえも燃え尽くすかのような激しい勢いの紅き炎に包まれた兄の欠片は、妹の目の前で何かも最早わからぬ小さな消し炭となって、やがて勢いが衰えチロチロと燃える火は強い風によってふっと消えた。
兄は、こんな死に方をするために生きてきたのだろうか。
優しい人だった。優しすぎる人だった。
一度は敵対し、その人を罵ったこともある自分がこんなことを言う権利もないのかもしれないが。
それでも、弔うことすら許されないような人だっただろうか。
兄だったモノに手を伸ばすことさえ叶わずに、ナナリーは呆然と薄紫の瞳を見開いていた。
小さな体の許容以上の絶叫を繰り返した喉は痛み、どんな言葉も発することはできなかった。ただ掠れた吐息だけが、ヒューヒューと耳障りな音を立てて漏れる。
「お・・にぃ・・さま・・・」
遠のく意識の中で群衆の声が聞こえてきた。
『ゼロ!ゼロ!ゼロ!ゼロ!ゼロ!』
何百、何千という人々の熱狂的な叫び声。
その声が記憶の中の優しい兄の声の上に被さって、黒く塗りつぶされていく。
「おにいさ・・・ま」
どんなに呼びかけても、愛に満ちたあの柔らかな声は返ってこなかった。
THE CRUEL STORY
中編
「大衆は派手な物語を好む。英雄譚の結末は劇的であればあるほど効果がある、というのがルルーシュの意見だった。ただし民衆が彼を辱めることはあくまで想定の一つであり、実際にソレが起こるとは確定できなかった。だからどのみち『ゼロ』が『悪逆皇帝』に火を点けることは初めから彼の計画だった。私はそこまでする必要はないと言ったのだが、彼は頑として聞かなかった。死体など、何の意味もないと。ならば“有効活用”するのが一番の手だと笑って、死に装束であった皇帝服に自ら発火剤を塗布していた」
当時のことを話しているうちに、ゼロと枢木スザクは次第に混じり合っていった。今まで切り離していたパーツが自然と一つに融合されていくのを内側で感じながら、瞼を開けたスザクは微かな吐息を吐いた。
「ああ、そうか。あの時『僕』はどうして彼の遺体を蹂躙することを嫌だと思うかを上手く言葉に説明できなくて、彼を説得することができなかったけれど。僕はただただ哀しかったんだ」
「何をですか・・・?」
ゼロの、スザクの答えを聞かずともナナリーにはその理由がわかっていた。何故なら今、同じ悲しみがナナリーの胸に渦巻いていたからだ。
けれどあと僅かの時間しか残されていない唯一全てを知る人を前に確かめずにはいられなかった。
彼を偲ぶように再び仮面の中で瞳を閉じたスザクは、枯れたはずの涙を一筋流した。
「彼が、ルルーシュが己の遺体を悼むものなど誰ひとりとしていないと信じていることが」
静かな声はナナリーの脳裏にあの日喉が裂ける程に叫んだ己の声をリフレインさせた。
「そして彼がそのことを幸せだと思っていることが、僕は何よりも哀しかったんだ」
その言葉にナナリーの瞳からはついに涙が溢れだしてきた。
年相応の皺が刻まれた頬の上にはらはらと零れていく。口元を手で覆い、嗚咽を堪えた。
兄は妹に愛されていると知らずに、憎まれたままだと思ったままだったのだ。
その死を以てしても許すはずがないと、亡骸を前に涙など流すはずもないとでも思い込んでいたのだろうか。
彼と共に生きた日々よりも遥かに長い年月を生きても、兄のことを想わない日など一日もないというのに。
あの日の惨劇を何度も夢に見て、飛び起きる朝は数え切れず。
尽きぬ後悔を生きる糧としているのに。
愛しているが故に消えぬこの苦しみを、あの賢かった兄は何一つ気付くことはできなかったのだ。
それは、それは。
「世界中に憎まれて死ぬことが彼の望みだった。ナナリー、何よりも愛した君からでさえも。―――まだ若かった当時の僕はその覚悟にどこか酔いしれていた。彼の鮮烈なまでの強い意思はまるで酩酊を誘う美酒のようだったのかもしれない。けれどその酔いから醒めた僕はとんでもないことに気が付いた。それは最早今更としか言いようのないものだったが・・・」
長年の激務が祟ったのか、病魔に蝕まれているスザクは仮面の中で彼の人の願いを宿した紅い瞳を苦しげに細めた。
「彼は、自分が愛されていることを知らずに逝ったのだと」
嗚呼、それは何て、何て残酷な真実。
後編へ続く