スザクとルル猫シリーズ
・すれ違い編2
です!
「ルルーシュ、もうそろそろ帰ろうか。寒くなっちゃうし。」
膝で寝てしまったユフィをベッドに下ろし、ナナリーとロロと体を寄せ合っていたルルーシュに声をかけたのだが、ルルーシュはチラリともスザクのことを見ない。
「あれ?寝てるの?」
常には気配には敏いルルーシュだから、不思議に思いながらスザクはルルーシュを抱き上げようとした。しかしスザクの手が絹糸よりも柔らかな漆黒の小さな体に触れようとした瞬間、ルルーシュはテテテっと逃げてしまった。
「えっ?」
猫といえど、ルルーシュはあまり運動神経が良くないらしく足は正直言って早くないので、すぐに追いつける。無理矢理抱き上げることもできたが、何となくそれをしてはいけないような気がして、スザクは大人しくルルーシュの後を追った。
ルルーシュはソファーに座りながらテレビを見ているジノの足元へ行くと、ジノのふくらはぎに軽く爪を立てた。
「なんだ、ルルーシュ。私の膝に乗りたいのか?」
ジノは嬉しそうにルルーシュを大きな両手でひょいっと持ち上げると、膝の上に乗せた。
スザクはジノの膝で寛ぐルルーシュという衝撃的な光景に唖然として、あんぐりと口を開けマヌケ面を晒していたが、ルルーシュはそこでようやくスザクの顔を見た。
それもうっすらと紫色の目を細めて、非常に不機嫌そうに。
「ル、ルルーシュ・・・?ジノの膝になんて乗ってないで、家に帰ろうよ。」
スザクは再び手を伸ばしたが、思い切りガブリと噛まれた。
「痛いっ!!」
思わずスザクが大きな声で叫んでしまうような強さだった。
他の猫ならいざ知らず今までルルーシュにこんな風に噛まれたことがなかったので、スザクはショックを隠せなかった。
「どうして、ルルーシュ・・・?」
茫然と呟くが、返ってくる声はなく、ルルーシュはジノの膝の上で丸くなってしまっていた。
「なんかルルーシュの機嫌悪いみたいだな。今日は帰りたくないみたいだから、うちに泊まらせたらどうだ?ナナリー達も喜ぶだろうし。」
少し困ったように笑いながらジノはルルーシュの体を撫でながら、そう提案した。
「・・・・。」
ルルーシュに視線を向けたまま黙ってしまったスザクだが、名前を呼ばれ、ぎこちなく頷いた。
「うん・・・。じゃあ今日は僕一人で帰るよ・・・。」
「ルルーシュのことは任せてくれ。」
「うん・・・。あっ、ルルーシュは夜寒いとよく眠れないから、暖かくしてあげて。あとご飯はキャットフードは食べないから、手作りのものにしてね。お水も水道水は飲まないから、それと、」
まだまだ続きそうな気配を感じ、ジノは苦笑した。
「そこらへんはわかってるから、大丈夫だ。大切にするから、安心してくれ。」
「・・・・。頼むね・・・。」
「ああ。」
玄関でもジノの腕に抱かれたルルーシュにスザクは熱心に視線を送ってみたが、見向きもされなかった。
「じゃあ、明日迎えに来るよ。」
せめてと、いつものように額にキスをしようとしたが、ルルーシュはジノの腕と体の隙間に顔を埋めてしまいそれも叶わなかった。
「気をつけてな。また明日。」
一向に帰る様子のないスザクに強引に挨拶をするとスザクは口を動かしたが、それは音にならずに、結局スザクは無言で頷いて、がっくりと肩を落として帰っていった。
スザクの姿が見えなくなる頃になってルルーシュは顔を上げて、小さな声でニャンと鳴いた。
その声がどこか泣いているように聞こえたジノは慰めるように、そっと艶やかな毛並みを優しく撫でた。
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