書きたいお話が多すぎて困ります(^_^;)
とりあえず、書き途中のお話から終わらせないとダメですよね!
ということで今日はルル猫です!
スザクとルル猫シリーズ
お風呂編 後編
「そ、そうなんだぁ」
シャーリーが白々しいまでの棒読みで頷いたが、周りは彼女の努力に内心拍手を送っていた。
そんな仲間の涙なしでは語れぬ苦労などまるで知らないスザクは、歯磨きのCMか幼児向けの教育番組にお似合いの夏の太陽のようなキラっとした笑顔を浮かべた。
ルルーシュの呆れたような、申し訳なさそうな、実に複雑な嘆息はシャーリーの腕に当たって静かに消えていった。
「でもさ、猫って水が嫌いってよく言うじゃない?ルルーシュも暴れたりするの?」
ふと浮かんだ疑問をカレンが口にすれば、よくぞ聞いてくれたとばかりにスザクの顔がキラキラと輝く。
「ルルーシュは普通の猫とは違うんだよ!ルルはお風呂が大好きでね、むしろ僕に強請ってくるんだ。尻尾をくるんって僕の足に巻き付けて、にゃあんって、信じられないくらい甘い声で啼くんだよ。もう可愛くて可愛くて、僕は毎日鼻血を堪えるのにひっ」
「そうなのね!確かにルルーシュって綺麗好きそうな顔してるものね」
スザクの危ない発言を何とか遮って、ミレイがルルーシュの額を人差し指で撫でる。
豪快なミレイらしく、ゴシゴシと眉間を擦ると、ルルーシュは僅かに迷惑そうに右目を顰めた。しかしそれはミレイの愛情をわかった上での、ルルーシュらしいある種のパフォーマンスで、本当に嫌がっているわけではない。もし本気が嫌だと思うのなら、ルルーシュは手入れの行き届いた自慢の爪を振りかざすだろう。それに威力があるかどうかは別として。
しかしミレイの多少乱暴な手つきを見咎めたスザクは、旋風のように動いてシャーリーからルルーシュを取り上げる。もちろんルルーシュを抱き締める際には、世界の至宝を扱うよりも慎重に、大切に、である。
あまりの早さに、その場にいた誰もが何が起こったのか理解できなかった。当のルルーシュでさえ、きょとんと紫色の瞳を見開いて、小首を傾げた。しかしすぐに嗅ぎ慣れたスザクの匂いとぬくもりに包まれていることに気付き、ルルーシュは無意識に頬をスザクの腕に擦り寄せて、小さく啼いた。
にゃん
その声を聞いたスザクは、固い蕾が一斉に開花するように顔を綻ばせ、ルルーシュの体に顔を埋めて、うっとりとした吐息を吐き出した。
「ルルーシュ良い匂い。甘くて、柔らかくて、上等なお菓子みたい。あ~、もう!本当に頭から食べちゃいたいくらい可愛いよ!」
にゃ、にゃあ・・・
それはちょっと・・・と言いたげなルルーシュの困ったような声が皆の鼓膜を擽ったが、ごめん、この変態はどうにもできないんだ・・・、と全員が無力を噛み締める遠い目をした。
「ん~、この匂い、ルルーシュによく合ってるね。こんなに美人でも男の子だから、もっとスッキリした香りの方がいいかなぁって思ってたけど、甘い苺の香りも良いね。凄く美味しそうだもの」
くんくんと犬のように鼻を動かして、ルルーシュから発せられている甘やかな香りを堪能しているスザクは、まるで恋人の香水を選ぶ彼氏である。
「猫ちゃん用のシャンプー使ってるんだよね?やっぱりブリタニア種専用とかあるの?」
ルルーシュの大ファンであることを自他ともに認めているシャーリーは、彼の使っているシャンプーにも興味津津である。
ちなみにここで得た情報はルルーシュファンクラブ(生徒会公認)の会員に、次回ファンクラブ会議の際に通達される。こういった彼の身の回り品の情報は、ルルーシュへの貢物という名のプレゼントを選ぶ基準になるので、大変喜ばれるのだ。
「別にブリタニア種専用っていうわけじゃないけど、最高ランクのものを取り寄せてるよ。今使ってるのは、完全無農薬のオーガニックで7種類の植物エキス配合のものなんだ。香りは特注で、天然の苺のものにしてもらったんだ。ルルーシュって、意外と甘党だから」
「ちなみに、スザクが使ってるシャンプーは?」
リヴァルの横からの質問に、スザクは何でそんなことを聞くのだろうと不思議に思いながら、邪気のない笑顔で答えた。
「僕?え~っと、何使ってたっけ。あっ!そうそう、お歳暮で貰った石鹸が大量にあって使い切れないから、シャンプー代わりにして使ってるんだ。もちろんちゃんと泡だててるよ!」
最後に見当違いなフォローを入れたスザクに、周りは揃って天を仰いだ。
そんな生徒会メンバーに、スザクはにっこりと笑ってルルーシュを持ち上げた。
「僕のことなんてどうだっていいんだ。ほら、見てよ。この艶やかな漆黒の毛!滑らかで、絹みたいな手触り!ルルーシュは何もしなくても美人なんだから、その資質を輝かせるのはパートナーである僕の責任でしょ?」
スザクは更に言葉を続けようとしたのだが(語彙の少ないスザクだがルルーシュの愛らしさに関しては七日七晩語っても、語り尽くせないのだ)、ルルーシュがもういい加減にしろと優雅な尻尾でスザクの腕をピシリと叩いたので、スザクによるスザクのためのルルーシュ講義は幕を閉じた。
その夜。
「ルッルーシュ!今日はお風呂どうする?」
黒い革のソファーの上で優雅に寝そべって転寝を貪っていたルルーシュは、ふわわわと欠伸をすると、タンと尻尾を上下に揺らした。
「えへへ、じゃあ皇子様、お風呂に参りましょう」
胸に手を当て膝をついたスザクに、まんざらでもなさそうにルルーシュは葡萄色の瞳を細めて、危なげなく肩の上に飛び乗った。
アパートの一室ならばすっぽりと入ってしまうような広さの、贅沢な総檜造りの脱衣所にある造りつけの戸棚の扉を開けてスザクはう~んと唸り始める。
扉の中にズラリと並べられているのは、全てルルーシュ専用のシャンプーとトリートメント剤である。良い物を見るとルルーシュに買ってあげたくなってしまい、計画もなにもなく買ってしまうスザクだから、一つを使い切る前に新しい物が増えるとういうことがエンドレスに続くため、専門店でも開けそうな今の状態になったのである。
今日はどれを使おうかと悩むスザクの顔は、しかし楽しげな微笑みが浮かんでいる。
その笑みをじっと見上げてルルーシュは思う。
シャンプーなど、どれでも構わないのだ。
もちろん好きな香りであれば嬉しいし、毛並みの美しさを褒められれば嫌な気はしない。けれど大事なことはそんなことではないのだ。
そう、好きだと思うのは、愛しいと胸が温かくなるのは、スザクのこの微笑みなのだ。
楽しそうに笑うスザクの顔が見られるのであれば、ルルーシュはその過程などどうでもいい。
そんなことを考えていると、ようやく今日のシャンプーを選び終えたスザクが、ん?とルルーシュに視線を向けた。
優しい光を宿す翠の瞳と、バチリと音がしそうな程にしっかりと眼が合って、ルルーシュは思わず啼いた。
なうん
その甘い響きの啼き声を人間の言葉に訳すのは無粋だろう。
なぜならその声が胸に届いたスザクの蕩けるような至福の表情を見れば、わかることだから。
スザクとルル猫
お風呂編
The End
本編だったらスザクさんは石鹸で髪を洗っていて、ルルーシュに怒られればいいと思います(*^_^*)
「お前はこのふわふわを何だと思っているんだ!!」とか何とか。
ふわふわを愛するルルーシュによる、シャンプー講座が長時間に渡って開かれます。