2010年 ルルーシュ追悼文
ともきは全力で追悼しているつもりですが、一般的に考えると全く追悼していません。
(ま た かw)
いつもの倍、注意なさってお入り下さることをお願い致します<(_ _)>
・ゼロレクイエム後 スザルル
・もしもルルーシュが助かっていたら・・・
・でも死ネタです
・悲恋
・かといって悪夢部屋のようにスザクさんが超絶後悔するお話でもない気がするので、糾弾系などをお求めの方のご期待にはお応えできないと思います。
相変わらず酷いですが、どんなお話でもドンとこい!
甘く幸せなお話は他素敵サイトさまで読むから、ここでは死ネタというスパイスをあえて味わい隊の方はよろしければどうぞ!
2010年 ルルーシュ追悼文
”もうギアスは使わない”
それがゼロ・レクイエムで奇跡的に命が助かったルルーシュと交わした約束だった。
「今日の夕食は何だろう。」
英雄ゼロが到底考えそうもないことをつい考えてしまう自分を軽く戒める。しかし家という名の隠れ家に帰ると、怪我から回復したルルーシュによる絶品料理が待っているのだ。
パブロフの犬のように帰宅時間が迫るとつい想像して口の中に涎が溜まってしまうのも仕方ないと思う。
始めの頃は人並みの幸せに一時にでも浸ることに罪悪感があって厳しい態度をとっていたのだが、自分よりもよほど辛いものを抱えているのにぎこちなく微笑むルルーシュを見ているとどうしようもない気持ちが沸きあってきて、今ある幸せを受け入れることにした。
そうするようになってからルルーシュには穏やかな笑みが少しずつだが自然と浮かぶようになってきたので、『スザク』としても素直に嬉しかった。
しかしだからといってゼロの仮面を被っている今、自分はあくまで『英雄のゼロ』でなければならないのだから、彼のことを想って微笑むなどあってはならない。それは計画通りゼロ・レクイエムを遂行したルルーシュへの敬意であり、そこに至るまで犠牲にしてしまった多くの命への償いでもあるのだから。
願いの先の幸福
前編
悪逆皇帝を倒したゼロはその拠点を皇宮に移したため、皇宮に住んでいると世間的には認知されているが実際は違う。
『ゼロ』である『スザク』が仕事を終え帰宅するのは、首都にある山の中。そこまで人里離れているわけではないのだが、そこはつい最近までは皇族領であったため、整えられているものの滅多なことでは人が入ってくることはない。
その静かな山中に小さなログハウスがあり、朝と夕方には良い香りが辺り一面に漂ってくる。そここそが『ゼロ』の家であり、『スザク』とルルーシュの新しい家だった。
ゼロ・レクイエムでルルーシュは本当に世界に命を捧げるつもりであったし、スザクも確かにそれに同意した。しかしパレードが終わってから抱き上げた体にぬくもりが残っており、微かな吐息を感じてしまえば、そうなることこそが運命だったのだと、ルルーシュを助けることに全力を尽くした。
その結果ルルーシュは一命を取り留める。
生き伸びたことに、最後の計画が失敗してしまったことに言葉も出ないほどのショックを受けたルルーシュを黙って抱きしめ続けたのは『スザク』だ。
『スザク』自身も正直どうしたらいいのかわからなかったが、気持ちだけは晴れやかだった。彼を失うかもしれないという恐怖を現実に味わった今では、どうして彼があんなにも生にしがみついていたのかが分かる気がしたからだ。今は例え罪悪感に押しつぶされそうになっても、生きてさえいれば何でもできるのだ。生きて、彼が納得できる償いの方法を見つければいいのだと、死に直面した『スザク』は未だかつてないほどに『生きる』ということに可能性を見いだせるようになっていた。
頑固なルルーシュを説得するのはとてつもなく骨の折れることだったが、それでも「君が僕に生きて欲しいと願ったように、僕も今君に生きて欲しいと願っている」と囁き、抱き締め、彼の心の柔らかい部分に慎重に触れていくうちに、ようやく紫色の瞳は本来の輝きを取り戻した。
そこで『スザク』は改めて知る。
ルルーシュも完璧などではなく、ごく普通の感覚を持ち合わせた孤独な人間なのだということを。
だからこそ約束をした。
もう二度とあの力は、ギアスは使わないでくれと。
彼に重荷をこれ以上背負わせたくなかったから。
彼に幸せになって欲しかったから。
彼のためを想えばこそのお願いであり約束であった、はずだった。
「ルル、ただいま~。」
仮面や衣装を皇宮にある自室に置き、変装用の一般的な服装に着替えたスザクは執務の疲れなど一切見えない軽々とした動きで山を駆け上り、二人の新居であるログハウスの大きな木製のドアを開ける。
「・・・・ルル・・・?」
何かがおかしい、と一歩家の中に入ると感じた。
几帳面なルルーシュであれば絶対にありえない室内の荒れた様子。花瓶は倒れ、色違いでスザクが揃えた独特なデザインのマグカップが床に転がり、中に入っていたであろう紅茶が水溜りを作っている。常にルルーシュこだわりの角度で定位置にきっちりと置かれているテーブルも斜めに、スザクが仕舞い忘れる度に直される椅子も引き倒されている。
そして何より、散々嗅いだことのある大嫌いな匂いが強烈に鼻を突き、異常を知らせてくる。
「ルルーシュ・・・?どうしたの・・・?」
きっとこの時スザクには分かっていた。
この先自分が見る光景を。
誰かが激しく暴れたように荒れ果てた室内と間違いようのない血臭がもたらす答えを、慣れた頭が冷静に結果をはじき出していた。けれど、どうか嘘であって欲しいという潜在的な願いがスザクに何も分からない振りをさせる。
「ルルーシュ?帰ってきたよ。」
ゆっくりと家の中を歩き周りスザクがルルーシュの城であるキッチンに入っていく。
そうして翠の瞳に映ったのは・・・・