・鏡合わせの皇子シリーズ
・ゼロルル+スザク
・ようやくお出掛けしてくれました^_^;
・多分あと一話でお出掛け編は終わりです。
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鏡合わせの皇子と玩具騎士 ~お出かけ編4~
(あああ、もう!!この二人はまたこういうことをしてっ・・・!!)
頭を抱えるスザクの目の前では、凄い光景が広がっていた。
市内にあるとある高級ホテルはこの不景気で集客力に悩んでいた。
そこで発案されたのが、他と比べれば多少高いがまあリーズナブルな値段のスイーツバイキングだった。
今まで高級ホテルに縁のなかった人達にこういうホテルならではの優雅な時間を味わってもらい、次のホテル選びの時の参考にしてもらおうという狙いだった。
このホテルを選んだのはスザクだった。
当初双子はもっと庶民的な、つまり女子高生が喜んで行きそうなレストランに行こうとしていたのだが、いくら女装して皇子だということがバレなくても、騎士としてそんな場所になんの警護も整っていない時に主を行かせるわけには行かなかったのだ。
なんとか必死に言葉を探して説得にあたろうとしたスザクだったが、拍子抜けしたことに主達は、
「ふうん。」
「別に」
「スザクがどうしても」
「そこがいいって言うなら」
「変更したって構わないが?」
とあっさりと頷いた。
王宮育ちの皇子達にはきっと高級ホテルと一般のレストランでのバイキングの違いなどわからないのだろうと双子の世間知らずさに感謝して、スザクは脱力しながらも行き先をかろうじて変更できたことにほっと息を吐いたのだった。
そしてどこからどう見ても美少女姉妹にしか見えない鏡合わせの皇子達とスザクはリムジン(これでも一番目立たない車を選んだつもりだ)に乗り込み、目的のスイーツバイキングへとやってきた。
背中まである黒髪のウイッグをつけ、綺麗に薄化粧までしたゼロとルルーシュは匂うように美しく、彼らの姿をチラリとでも目にした人達は皆ポカンと口を開けその場に立ち止まってしまう。双子の美しさの前では誇り高い大輪の薔薇さえも恥ずかさのあまり花びらを閉じてしまうだろう。
「ゼロ。」
「ん。じゃあこっちは?」
「結構いける。でももう少しバターの量を控えた方がいいな。」
「私もそう思う。これは美味しいな。今度ジェレミアに作らせようか。」
「そうだな。オレンジなら美味しく作ってくれるだろう。」
聞くだけならまともな会話だ。
しかしこの二人が二人でいてまともなはずがない。
赤面するスザクには一切構わず、双子は自分たちの世界に入っている。
二人は何故か自分で取ってきた分を自分では食べないのだ。
ゼロはルルーシュに、ルルーシュはゼロにお互い食べさせ合っているのだ。
一目で質の良いシルクとわかる品のよいひざ丈の漆黒のワンピースを華奢な体に纏い、長い黒髪を優雅に華奢な背に垂らし、大理石の頬を熟れた桃ように上気させた美しい少女が(実際は少年だが)鏡合わせのように隣り合って座り、お互いの桜色の唇に磨かれた銀のスプーンを運び合っている姿はこの世のものとは思えない。
しかし当然その物語の挿絵のように美しい二人の摩訶不思議な行動が目立たないはずはなく、周囲のテーブルから往年の女優を照らす強烈なライトのような視線を浴びせられている。
「「ん。おいしい。」」
どうやらお気に入りのお菓子を見つけたらしく、うっとりと恍惚の表情でほうと吐息を同時に洩らした双子の麗しさと言ったら二人の唇から花びらが飛んでくるのではないのだろうかと思うほどだ。
「スザク?」
「なんだ全然」
「食べていないじゃないか。」
「なんだ全然」
「食べていないじゃないか。」
「お前の呆けた顔には」
「慣れたつもりでいたが」
「今日は特に酷いな。」
「「何かあったのか?」」
紫水晶そのもののような大きな紫色の瞳をくるりと瞬かせた双子に、スザクは面と向かってため息を吐くわけにもいかず、疲れきった労働戦士の枯れた笑みを口の端に上らせた。
「いえ、大丈夫です。・・・まだ。」
最後に呟いた言葉は届かなかったのか、二人はすぐにお菓子がこれでもかと盛られた皿に視線を移した。
スザクがうっすらと苦労の涙を浮かべそうになった時、ふとルルーシュがスプーンを持った手を伸ばしてきた。
「え?」
「ほら、これ食べてみろ。」
「ルルーシュのお墨付きのプリンだぞ。」
「これを食べたら元気になれるぞ。」
サンタクロースを信じる無邪気な子どものような純粋な瞳を向けられ、スザクの胸はドキリと煩く高鳴った。
しかしその綺麗な二つの頬笑みを見て、一瞬でその高鳴りは冷や汗へと姿を変えた。
腕を伸ばされたこの状況は、まさかの「お口、ア~ン。」
これは何かの撮影か!?というほど大注目されている衆人環視の中で、事もあろうに主であるルルーシュ皇子から「お口、ア~ン」」をされろというのか!!
「い、いえ、自分で食べられます。大丈夫です。」
慌ててプリンを取りに行こうとしたのだが、ルルーシュの可憐な少女のような顔がくしゃりと歪んだことにより、スザクは腹を括って身を乗り出した。
「や、やっぱり頂こうかな。」
「そうだぞ。」
「何のために王宮を抜け出してきたと」
「「思っているんだ。」」
ニコリと花のような笑顔が二つ並んだ。
「いくぞ。」
見た目に反して存外男らしい皇子はさすがに「ア~ン」とは言わなかったが、状況はまさにそれ。
そのフロアに数人いた数少ない男性陣からの刺し殺すような視線を受けながら、ありがたくスザクは主のスプーンからプリンを頂いた。
「んっ。」
「「どうだ?」」
「美味しいです。ジェレミアさんのとはまた少し違った感じで。こういうのもいいですね。」
「「そうだろう!!」」
自分たちが作ったかのように双子は誇らしげに胸を反らした。
その金剛石のように輝く笑顔は素晴らしく魅力的なので、スザクはそれまでの疲労感を苦笑一つで済ませてしまう。
さあこれで気も済んで帰るだろうと予想したのだが、事がそんな簡単に済めば世の中からはとっくに胃薬が消えていただろう。
「さ、」
「次はあのチョコレートの滝に」
「「行くぞ」」
鏡合わせの皇子達の探究心はまだまだ治まらない。
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