Hey・・・3
・ルル死ネタ
・後悔するスザクさん
・現代スザ→←ルル リーマンスザクさん
・王道を極める展開
・正確ではない病気・症状表現
何だか間を空けてしまうと微妙な空気がOrz
このお話がやたらと細かいことへの言い訳はまたあとがきで・・・。
まだ少し続くんです・・・。
もう常習犯のともきのサイトに間違っていらっしゃる方はいないとは思うのですが、
苦手な方は全力回避(ひ)でお願い致します。
1・2はカテゴリー「ギアスSS」の中に入っています。
ちょっとまどろっこしい感じでもよろしければ!
Hey・・・3
ノックをしてから耳を澄ませたが、一向に返事が返ってこない。
遠慮して小さめに叩いたから聞こえなかったのかと、もう一度今度は強く三回ノックをしたがやはり返事が無い。
寝てしまっているのか、それとも診察などでいないのか。
見舞いなど初めてのことでこのような場合どうしたらいいのかわからず、スザクはプリンが入ったコンビニのビニール袋を手に下げたまま、困ったように首を傾げて立ち尽くした。
「どうかなさいましたか?」
通りすがりの明るい長い髪をきちんと背中で結った看護師が、ドアの前で眉を寄せているスザクに声をかけた。
「いえ、あの。お見舞いに来たんですけど、返事がないので入っていいのかどうかわからなくて・・・。」
困惑したようにスザクが言うと、看護師は壁にかけられているプレートを見るとああと頷いた。
「ランぺルージさんですね。今はちょうどお薬も切れる頃で起きていらっしゃると思いますよ。」
腕時計で時間を確認してもう一度うんと頷くと、シャーリー・フェネットと書かれた名札を付けた看護師は軽くノックすると返事を待たずにドアを開けた。
どんどんと入っていくシャーリーに呆気に取られながらもスザクも中に入る。
一般的な病室とは比べられないほどに広い室内は、適度な湿度と温度が保たれていて空気も薬の匂いなど一切なくどこか清浄に感じる。床には絨毯がひかれており、家具などの調度品もどれも落ち着いた色合いの上品なものだ。
これでは本当にホテルじゃないかとスザクがきょろきょろと辺りを見回していると、繊細な木枠が華やかな印象を与える大きなベッドに近寄ったシャーリーが囀るように口を開いた。
「ランペルージさん、お客様ですよ。ふふっ、それも結構イケメンな。ランペルージさんのお友達はみなさん格好良かったり、可愛かったり。いいですね。」
病院とは無縁そうな明るい声は、しかし逆に病室に合っていた。
患者を元気づけようという心遣いが伝わってきて微笑ましいのだが、スザクは一瞬ドキリとした。ルルーシュに対するシャーリーの話し方は寝たきりの老人に叶わない夢を見させるような、そんな響きがあったように感じたのだ。
「どこか痛いところはないですか?」
スザクの位置からではベッドに寝ているであろうルルーシュの姿が見えない。
だから何故ルルーシュの声が聞こえないのかわからなかった。
「一時間後に先生がまたいらっしゃいますからね。何かあったらすぐに呼んで下さいね。」
また返事がない。
「じゃあ私は失礼します。」
身を翻したシャーリーはどこか所在なさげにしているスザクに小さく微笑むと、静かに病室を出て行った。
「ル、ルルーシュ?」
躊躇いながら声をかけ先程までシャーリーがいたベッドの横まで行くと、スザクは息を呑んだ。
ベッドに横たわるルルーシュには人口呼吸器が付けられていたのだ。
僅かに首を動かして、昔と変わらぬ大きな紫水晶の瞳でスザクを見たルルーシュは嬉しそうに目元を和らげた。
「・・・ザク。」
白く曇るマスク越しに聞こえた小さな小さな声。
「・・・う、うん。久しぶり。遅くなってごめんね。なかなか仕事が落ち着かなくてさ。」
どこから何を話したらいいのかわからない。
わずか一週間前に電話で話した時はあんなに元気そうな声をしていたのに、これは一体どういうことだろう。
こんな重病そうだなんて、思ってもいなかった。
戸惑うスザクにルルーシュはほっそりとした腕を重たそうにゆっくりと動かして、口に付けられているマスクを外した。
「すまないな。大袈・・・裟だろう?大したことはない・んだ。ただ大事を取って、ということらしい。気にし・・ないでくれ。」
先程よりは大きな声で、しかしやはり囁くような音量だった。
けれどスザクはルルーシュの白い顔に浮かんだ柔らかな表情に安堵して、ドクドクと嫌な音を立てていた心臓が徐々に静かになるのを感じた。
「そうなんだ。吃驚しちゃったよ。でも無理はしないでね。僕もすぐに帰るし。」
「ああ。」
脇に置かれた椅子に座りながら改めてルルーシュの顔を見つめると、どうしようもなく全身が熱くなった。
ここ一年ほどは互いに忙しくて、なかなか会うこともできなかったため酷く久しぶりのような気がしたが、ルルーシュの美貌は以前にも増しているように思える。
顔色は決していいとは言えず明らかに病床の身であることがわかるのだが、幼さの取れた繊細な顔立ちに前よりも穏やかになった澄んだ瞳、影を作る長い睫毛、記憶にあるよりも長くなった絹糸のような黒髪。
ここが病院ということを忘れてしまうような心地良い空間にしっくりと収まる佳人の姿に、高校生の頃から変わらぬ熱い思いを再確認させられた。