スザクとルル猫の冬のある日。
二人でいればぬくぬくだね!
スザクとルル猫とコタツ①
くちゅん!
その可愛らしいくしゃみが小さく響いた瞬間、スザクは友人からは「お前、人間じゃねえよ・・。」と評価される人外な脚力を使って、小さな体を丸めている黒猫の元へと文字通り飛んでいった。
「大丈夫?ルルーシュ。」
お気に入りのクッションの上で日向ぼっこしていたルルーシュを抱き上げ、確かめるように顔を覗きこんで返ってきた返事は、くしゅん!という盛大なくしゃみだった。
「寒いの?」
問い掛ければ、ふんと鼻を鳴らされた。
しかしその態度とは反対にスザクの高い体温を求めるように胸元に擦り寄ってくる。
「ええっと、ちょっと待っててね。」
ロイドに貸してもらった本で調べようと、ルルーシュをクッションの上に戻そうとしたが、
不満そうにニャンと鳴いて油断していた指を思い切り噛まれた。
仕方なく(と言いながらスザクの口元は緩みっぱなしだが)ルルーシュを片手に抱きながら、本を広げる。
「ん~と。ブリタニア種は寒さに弱いので、寒さ対策は十分にすること、か。どうしよう。ルル専用の小さめのカーペットとか買ったほうがいいのかな?」
どうしようかと悩んでいたが、ふと冬の定番な存在を思い出す。
「ちょっと待っててね。すぐに戻ってくるから。」
喉の下を優しく撫でてやると満更でもなさそうな声が返ってきて、そっと毛布の上に小さな体を置くと、スザクは再び猛ダッシュをして広い屋敷の物置部屋まで走った。
「じゃ~ん!見て、ルルーシュ!これでもう温かいからね!」
得意げにスザクがルルーシュの前に披露したのはコタツだった。
それはずっと昔、スザクが本当に幼い頃に家族三人で使ったことのあるコタツだった。
微かに残る思い出の中で、滅多に顔を会わせない両親とこんなに狭い空間に身を寄せているのがとても嬉しくて、大はしゃぎしたのを覚えている。
それもひと冬だけの思い出で、それ以降はスザクが期待してコタツを用意しても、結局一人で使うだけになってしまった。
一人で使うには広いテーブルに淋しさを覚え、いつの間にか物置の奥深くにしまってしまった。
「ちょっと布団がカビ臭いかな・・・・?ごめん、ルルーシュ!今日はこれで我慢してくれないかな?明日新しいのを買ってくるからさ。」
気位の高い黒猫を恐る恐る見ると、純度の高い紫暗の瞳がこちらをじっと見つめていた。
なんだろうかと黙っていると、静かにソファーから下りスザクの足元までやってきた。
「これで我慢してくれるってこと?」
にゃ~ん。
猫語はあいにくと理解できないが、ルルーシュの言葉は理解できるようになってきたつもりだ。それはきっと、相手のことを理解したいと思う強い気持ちが成せることかもしれない。
「じゃあ、一緒に入ろうか!」
少しカビ臭い布団を捲ると、ルルーシュがしなやかな身体をテーブルの下に収めた。
スイッチを入れてしばらくすると、足元が暖かくなってきてスザクの気も一気に緩んだ。
外から入る麗らかな午後の日差しに眠気を増長させられ、気がつけば目蓋を完全に下ろしていた。
すうすうと気持ち良さそうな寝息が響く頃、コタツの中からひょこっと顔を出したルルーシュはスザクの胸元に寄り添い、人間のように満足気な息を鼻から吐いた。
「ん?え?僕、寝ちゃったの!?」
空が真っ暗になって目を覚ましたスザクは驚いて身を起こそうとしたが、胸元の小さな存在に気が付いて、ゆっくりと体をもとに戻した。
どこか微笑んでいるように見えるルルーシュの顔を見つめながら、思い切り息を吸い込んだ。
冬の匂いに混じって、幸せの粒も胸いっぱいに吸い込めたような気がした。
「今年の冬はもう寒くないね。」
それはきっと心が満たされて暖かいから。
綺麗な毛並みの額にそっとキスをして、スザクは優しく微笑んだ。
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