皇子と騎士犬シリーズ2
・犬スザク(子犬)×盲目の皇子(14歳)
スザクを飼うことを周りに反対されたルルーシュの気持ちとは?
皇子と騎士犬
「ごめんな、お前が悪いわけじゃないのに。」
「ごめんな、お前が悪いわけじゃないのに。」
天蓋付きのベッドに座り、膝に乗せたスザクの柔らかな毛を撫でながら、ルルーシュは謝った。
確かに突然走り出したことには吃驚したが、子犬が興味のままに身体を動かすことは責められるべきことではない。
目が見えないため咄嗟に対応できずに、スザクに引っ張られるままに階段から落ちてしまったが、それでもスザクが悪いことなんて何もないとルルーシュは考える。
スザクを他の人間に任せて新しい犬を飼うようにと兄は散々勧めてくるが、いくら敬愛する兄の提案だとしてもルルーシュは簡単に頷くことができない。
優秀であればいいわけではないのだ。
介助犬を探しているわけではなく、ルルーシュがスザクに求めているのは失った家族の愛情であり、心の支えになってくれるパートナーなのだ。
能力の高さや完璧性など初めから求めていない。
どんな失敗をしようが、自分を傷つけようが、ルルーシュはスザクのことが愛おしくてたまらない。
あるがままを受け入れるのが家族というものだろう?
そのことを兄にわかってもらうためにはどうしたらいいのかと、ルルーシュは歳に似合わぬ重たいため息をつく。
すると慰めるようにスザクがクウンと鳴いたので、ルルーシュは小さな白い花が咲いたような笑みを浮かべ、スザクを胸元へ抱き寄せた。
ふわふわの体からは陽だまりの優しい匂いがして、ふと泣きそうになった。
スザクから胸一杯に幸せな気持ちが流れ込むと同時に、亡くした妹からも同じ匂いがしたことを思い出したからだ。
「どこにも行かないで。」
ぎゅっとスザクを抱きしめると、ペロペロと頬を舐められた。
不安から蒼褪めていた冷たい頬を溶かすような温かなスザクの舌に、遠ざかっていた睡魔が枕元にやってくるのを感じた。
「明日も散歩の練習しような。」
目蓋を半分下ろしながらそう言うと、スザクのクルリとした大きな緑色の瞳が嬉しそうに輝いた。
いつだってスザクはこうして明るい気持ちをくれるのだ。
ルルーシュは誰に何を言われようとも決してスザクを手放すことなどしないと改めて心に強く誓うと、一足先に夢の世界に旅立ったスザクを抱きしめながら瞳を閉じた。
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