こんな時は死ネタに限るね!
栄養ドリンクを飲んで徹夜するサラリーマンのように、ともきは死ネタを書く!
引くよね、皆さんドン引きですよね・・・。
半身様だけは元気が出るとともきは信じています(←)
悪夢部屋に入れるお話かどうかちょっとわからないのですが、
(今は編集する余裕がないのでこちらで更新ですが)
基本コンセプトは変わりません。
・ルル死ネタ
・後悔するスザクさん
今回は槇/原/敬/之さん「Hey・・・」よりイメージ
・現代スザ→←ルル リーマンスザクさん
・王道を極める展開。
苦手な方は全力回避!でよろしくお願い致します<(_ _)>
Hey・・・
死んでしまうことなんて君が旅立った日まで
凄く特別すぎて縁がないことに思ってた。
いくつも処理しなければならない書類の山に囲まれて、スザクは椅子に座ったまま天井に腕を伸ばして大きく伸びをした。
弱音を吐きたいような気もしたが、このご時世苦しいのは皆同じだと自分に言い聞かせる。
長い息を吐いたちょうどその時、デスクに置いた最新の携帯が震えた。
ピカピカと光るその色は紫色。
昔から抜けない癖で買ったばかりの携帯にも真っ先に設定したそのランプが意味するのは。
「もしもし?ルルーシュ?」
逸る胸を抑えきれず、疲れなども吹っ飛び弾んだ声が出た。
「・・・相変わらずせっかちだな。」
苦笑交じりの柔らかなテノールに、思わず笑みが零れる。
もっと鮮明にその声を聞きたいと手にした携帯を痛いくらに耳に近付ける。
「だって凄い久しぶりじゃないか!どうしたの?元気にしてる?」
こうして電話をするのはいつぶりだろうか。
忙しい日々に流されるようにして、毎日を乗り越えることに必死で電話をする余裕もなかった。
「ああ、ちょっと今入院していてな。」
さらりと言われたことに咄嗟に言葉が出てこなかった。
「えっ・・・。」
真っ白に染まった脳では母音しか検索できなかった。
「だ、大丈夫なの?どうしたの?っていうかいつから?」
一呼吸すると言葉は矢継ぎ早に次々と出てきた。
「大したことはないみたいだ。・・・もう三カ月も入院しているからな、この生活にも慣れた。テレビを見ていたら、急に今お前は何してるかなって気になったんだ。ほら、あのくだらないお笑い番組、よくお前と一緒に見て笑ったななんて思い出してな。」
楽しげな声にほっと胸を撫で下ろした。
元気そうな様子に、知らずに緊張していた体から力が抜ける。
「ああ、あの番組?学生の頃はよく見たねぇ。懐かしい。僕は最近暇がなくてちっとも見れてないけど、ルルーシュが退院したらDVDでも借りて久しぶりに一緒に見ようか。・・・それにしても三カ月って。もっと早く教えてくれたって良かったじゃないか。薄情者。」
ザアザアと一瞬の電波の乱れの後、ルルーシュのクスクスという小さな笑い声が耳を擽った。
「悪いな。俺もまさかこんなに長引くとは思わなかったんだ。俺だって一応気を使ったんだぞ。似合わないエリートの道を選んだお前は忙しいだろうと思ってな。優しいだろう?」
繊細な顎を反らす様子が目に浮かび、スザクはぷっと吹き出した。
「はいはい、ルルーシュは優しいなぁ。感動しちゃう。」
わざとらしいまでの甘い声で言えば、フフンと満更でもない反応が返ってきたのでまた頬が緩んでしまう。
「じゃあ近いうちにお見舞いに行くよ。何か持ってくよ。何かリクエストは?」
「苺。」
間髪入れず返ってきた応えに喉の奥が震えた。
脳裏には甘い苺を頬張って、いつもはクールな顔を子どもみたいにあどけなく蕩けさせていたルルーシュの至福に満ちた笑顔が蘇って、体がカアと熱くなる。
電話越しなのだからバレるはずなどないのに、それを隠すように平静を装った。
「今の季節には無理だよ。だからもう少し早く言ってくれたらよかったのに。第二希望は?」
「何だと思う?」
悪戯っぽい声音に、何かを試されているような気がした。
記憶を深く探らずとも、彼の好物はすぐに思い出せた。
ルルーシュはどこかの皇子のような高貴さを漂わせているからさぞや好みも煩いのだろうと始めの頃は思っていたのだが、実際は意外とおおざっぱで、好きなものも数少なかった。
しかしそうだとしても高校時代の友人の好物をしっかりと覚えているのは、奥底にしまっておいた真の感情が今もなお熱く燃えている証拠だろう。
「・・・プリンでしょ?」
君のことなら何でも覚えているよ。
そんな言葉は深く呑み込んだ。
「正解。じゃあ楽しみにしてる。」
「うん。たくさん買ってくよ。」
「いくら俺でも食べれる限界ってあるんだからな、それは忘れるなよ。」
少し慌てたような早口が面白かった。
「そんなこといって、あの店の巨大プリンパフェを完食して伝説作ったのはどこの誰?」
どうしても挑戦してみたいのだと、男の目をしたルルーシュが挑んだのは全国でも有名な巨大パフェ。今まで誰も完食できなかったというそれを、ルルーシュは至極幸せそうにパクパクと口に運び、何かの魔法のように全て綺麗に食べてしまった。
店中の人間が茫然とルルーシュと空になっていく器を見ていたのを思い出して笑ってしまうが、そういう自分も馬鹿みたいに口を開けて目を見開くことしかできなかったなと思い至り、口元を引き締める。
「あれは若さだな。」
きっぱりと言い切ったルルーシュの声が遠くを懐かしむようで、つられるようにスザクも黄金色に輝いていたあの頃を思い出し、胸がきゅうと苦しくなった。
「若かったね、僕ら。・・・まぁ、今も十分若いと思うけどさ。」
「ふふっ、そうだな。」
こんな会話をする日がくるなんて想像もしたことなかった。
高校生の自分が今の姿を見たら何て言うのだろうか。
「長電話も悪いよね。じゃあ今度お見舞い行くから。」
「すまないな。」
「全然!こんなこともなかったらなかなか会えないし。またね、おやすみ。」
「ああ、おやすみ。」
電話を切った後も浮き立った余韻が抜けずに、笑いが零れて、重たかった体が不思議と軽くなった。
2に続く。