Ｈｅｙ・・・２

・ルル死ネタ

・後悔するスザクさん

・現代スザ→←ルル　リーマンスザクさん
・王道を極める展開
・正確ではない病気・症状表現

苦手な方は全力回避！でよろしくお願い致します<(_ _)>

 

Ｈｅｙ・・・２


ルルーシュとスザクは高校で出会って、親友になった。
第一印象は最悪で、だけどすぐにスザクはルルーシュに惹かれていった。
ごく一般的な家庭で育ったスザクとは違い、ルルーシュは母子家庭で苦労していた。
いや、母子家庭だからというのは失礼かもしれない。正確に言うと、ルルーシュの母親は所謂（いわゆる）『お妾さん』で本家との兼ね合いに気苦労が絶えず、ルルーシュが高校に上がって暫くするとついには心を病んで亡くなってしまった。三つ違いの妹を施設に連れていかれそうになったルルーシュは、幾つもバイトを掛け持ちして妹と自分を養っていた。寝る暇も惜しんで働き、学校では背優秀な成績を修めるルルーシュは、ぬくぬくと育ったスザクには孤独なヒーローのように見えて、どうしようもなく惹かれたのだった。
憧れがいつしか、華奢な身体で体当たりで頑張る彼を守りたいという恋心に変わるまでそう時間はかからなかった。
次第に仲良くなったスザクはよくルルーシュを家に呼び、二人で馬鹿話をしたものだ。
いつも気を張って我武者羅に生きていたルルーシュもスザクとするくだらない話に気を抜くことができて、日々のバランスを取っていたように見えた。

ルルーシュと話した夜から一週間ほどが過ぎ、大きなプレゼンの準備が少しだけ落ち着いた日の昼休みに、スザクはルルーシュが入院しているという病院を訪ねた。
時間があまりないため約束のプリンをちゃんとした店で買う余裕がなく、結局コンビニのプリンを幾つか選んだ。新商品に混じって、数年前と変わらない銘柄を見つけて思わず懐かしさに笑みが零れた。クールな外見を裏切って甘いものが大好物なルルーシュと違い、甘い物が好きそうだと言われる童顔なスザクはルルーシュと一緒でなければ甘いものは進んで食べない。つまりここ数年プリンなど食べていないということだ。
甘い、甘いと顔を顰めるスザクのプリンを奪い取って、猫のように紫色の瞳を細めてスプーンをせっせと桜色の口に運んでいた姿を思い出して、あの頃よく食べていた甘いプリンの味が舌に蘇った気がしてまた頬を緩める。
当時のスザクは、プリンよりもチロリと覗くルルーシュの赤い舌に心を奪われていたのだが。

初めて訪れた病院はとても現代的なおしゃれな建物で、一瞬スザクは気圧される。
受付に向かいルルーシュの名前と病室の番号を告げると、病院の見取り図のような地図を出され丁寧に行き方を説明された。
イマドキの病院ってサービスが凄いななんて思いながら、説明された通りに向かった先はやたらと静かな別館。一歩中に踏み出すと、そこは別世界だった。
ふかふかな絨毯に壁には高級そうな絵がかけられ、ヒーリング系のＢＧＭが小さな音量でゆったりと流れている。大きな窓から差し込む日差しがそこかしこに置かれた観葉植物に光を降り注ぎ、柔らかな空気が漂っている。まるで高級ホテルのようだ。

「すごいな・・・。」

入社してから何度も接待などで高級な店に出入りするようになっても、生来の気質か未だにこういう雰囲気には慣れない。
こんな所に入院しているということは、今ルルーシュは金銭的な苦労をしていないということだろうか。
妹のために全教師に嘆かれつつも大学進学をせずに、働いていたルルーシュ。
そんなルルーシュを守れるように、自分のやりたいことを何もかも我慢して働いていた彼がしたいことを応援できるように、スザクは今の会社を選び必死に働いているのだが、もしかして自分は必要ないのだろうか。
ふとよぎった考えを振り払うように勢い良く頭を振る。
きちんとした大人の男になって、ルルーシュにプロポーズをするのだ。
こんな所でめげてはいられない。
顔を上げたスザクはいつの間にかルルーシュの病室の扉の前に立っていた。

コンコンコン。
ふーと大きく息を吐いた後、慎重にノックをした。
あの柔らかなテノールが返ってくることを当たり前のように期待しながら。


３に続く