でもいいのだ!
ともきは前に進んで行くのだ!
とうことで(?)
It's a wonderful world 中編
黒スザク×可哀想なルルーシュ
現代パラレル
前編・後編に分けてわりと短いといったのは一体どこの誰?
長くなりました☆(殴)
よろしければあともう少しお付き合い下さい<(_ _)>
「お腹空いたよね?何が食べたい?」
安定剤を呑ませ、ベッドに寝かせたルルーシュの黒髪に指を絡めながらベッドに腰掛けたスザクは優しく問いかける。
スザクの指の感触に気持ちよさそうに瞼を閉じていたルルーシュは何も食べたくないと首をふるりと振った。
「ダメだよ。ちゃんと食べなきゃ。僕が作ってくるから、ちょっと待っててね。」
くしゃりと頭を撫でて離れようとしたが、ドアに向かったスザクを止めたのはルルーシュの細い指だった。スザクのシャツの裾をルルーシュがぎゅっと握っていたのだ。
「・・・・あぶない。」
ルルーシュがスザクの眼をじっと見て泣きそうに眉を寄せて、ポツリと呟く。
これもほぼ毎日繰り返されることなので、スザクは決まった言葉を今日も優しく返す。
「危なくなんてないよ。大丈夫。」
シャツを掴んだ手をそっと剥がしその桜貝のような爪先に小さくキスを落とすが、ルルーシュの表情は晴れない。
「行かないで。すざく、どこにもいかないで。」
クールで皮肉屋でもあったルルーシュからは考えられない程に頼りない声は、幼い子どもが母親を求めるようで、スザクは僅かに俯いて湧き上がる笑みを隠した。
「どこにも行かないよ。少しだけだから。すぐに戻る。」
白い頬にキスをして、スザクはキッチンへと向かった。
It's a wonderful world 中編
火事に遭うまでは、忙しい母の代わりに妹に食事を作っていたルルーシュは料理が大好きだった。可愛い妹を喜ばせるために、素人とは思えない程の料理をマスターして毎日、毎日愛する家族のために食事を作っていた。
しかし食べさせる相手が亡くなってしまったあの事件以来、ルルーシュは全てを奪った火に対して強烈な恐怖心が植え付けられ、コンロの火でさえも見られなくなってしまったため、一切料理をしていない。
だから今はスザクが料理の本を買ってきて、慣れない手つきながらに一生懸命作っているのだ。
どこにも行くあてがなかったルルーシュを引き取ったスザクは当初あまりにも火を怖がるルルーシュのために電磁調理のキッチンがあるマンションに引っ越そうとも思ったのだが、すぐにやめた。
小さな火を怖がって己に縋りつくルルーシュの甘い体は何にも代えられない快感だったからだ。
カチリと火を止めると、スザクは作ったおかゆをお椀に移してベッドルームへ向かう。
ルルーシュはスザクが本当に自分のもとへ無事に帰って来るのか心配だったようで、ドアから入ってきたスザクの姿を見て、安心したように大きな瞳を和らげた。
「ルルーシュ、ご飯持ってきたよ。さ、食べよう。」
サイドテーブルにお盆を載せ、痩せた背中に手を添え身を起こすのを手伝ってやる。
スザクがレンゲに一口おかゆを掬い淡い色の口元へ持っていくと、ルルーシュは少しずつゆっくりと嚥下していく。
親鳥が雛に餌を与えるような、全幅の信頼を向けられた行動にスザクの胸に満たされたような思いがじんわりと広がっていく。
30分ほどかけてようやくお椀の中を半分ほど空にすると、ルルーシュは首を振った。
「もういいの?」
うんと頷いたルルーシュに困ったように笑いかけながら、しかし無理強いすることはなくスザクは褒めるようにルルーシュの髪を柔らかく撫でた。
「じゃあ包帯を換えようか。」
サイドテーブルの引き出しから薬と包帯を出して、スザクはルルーシュのパジャマのボタンを外して、丁寧に脱がす。
露わになった華奢な体のほとんどは包帯で覆われている。
包帯の下には痛々しい火傷の痕が残されていて、かつての滑らかで白い肌はどこにも見当たらない。しかしスザクはこの醜く引き攣れた肌が愛おしくて堪らない。以前の極上の絹のような肌よりもよほど愛を持って触れている。
「あまり見ないでくれ。・・・醜いだろう・・・?」
細い声がスザクの耳朶を擽っていく。
「そんなことない。凄く綺麗だよ。」
耳元で熱く囁いて、健常な肌と引き攣れた所の境目に舌を這わし、腰に手を回す。
「君を愛してる。この傷跡を抱えた君の全てが愛おしい。」
誰よりも、何よりも君を愛してる。
そう、そうでなきゃ犯罪なんて犯さないよ。
後半の言葉を胸の奥深く呑みこんで、全身の包帯を解いた。
後編へ続く