洗濯物が風に揺れる様子を見るのが結構好きです。
ちょっと日陰に入って、ぼんやりと舞う洗濯物を見るんです。
目を閉じて風を感じるのも好きだし、目を開けて青い空を見るのも好き。
その一瞬を感じるのと同時に、空の向こうにずっと遠い時を感じる不思議な時間。
忙しい日々を生きる中で、こうして何の意味のないようなぼんやりとした時間を少しでも持つことって結構大事なような気がしますv
さて!
スザクとルル猫シリーズ 初夏編 後編です(^o^)/
長くなってしまったのですが、3つに分けるのはどうかと思い一気にUPしてしまいますが、長すぎて読みづらいかな・・・?
もし長いと読みづらいよ!短くして!という方がいらっしゃいましたら、教えて下さい<(_ _)>
なるべく読んで下さる方に読みやすいように!を目指しています。
(でも長くして!にはお応えするのは難しいかもしれませんが・・・)
少しでもお楽しみ頂けますように。
しっかりと27度に設定し直したスザクは、ふ~と息を吐くとルルーシュを抱いたままベッドに傾れ込む。
計画性のない試験勉強のため、前日になって徹夜をするという勉強スタイルなので、試験が全て終わった今日はさすがに連日の寝不足がたたり、三時になった銀行のシャッターのように瞼が下がってきてしまう。
「るる~しゅ~、一緒にお昼寝しよう~。」
半分下がった瞼のまま、舌っ足らずに甘い誘惑に誘うのだが、当のルルーシュはスザクの体温が暑苦しいらしくジダバタと暴れた。
それでもスザクは柔らかな体に未練があり、しつこく抱きしめているとついに頬を鋭い爪で引っ掻かれた。
にゃ!
(暑いんだよ!離せ!)
涙目で「るる~しゅ~。」とブツブツと言っているスザクの腕からヒラリと抜け出し、ルルーシュは部屋の隅に行き、冷たいフローリングにパタリと横になった。
ひんやりとした床が気持ちいいのか、にぅと小さく満足気に鳴いて尻尾をゆらゆらとさせた小さな黒猫の姿にスザクは「ツンデレな君も可愛いよ。」とうっすら涎を垂らしていた。
ジノなどに見られれば腹を抱えて笑われるだろうし、カレンが見ればドン引きすることは間違いないかなり危険な恍惚とした表情だった。
スザクとルル猫 初夏編 後編
それからルルーシュの小さな寝息が聞こえてきた頃スザクも爆睡してしまい、その数時間後、ようやく二人して目が覚めるともう陽が沈みかけており、空は何層にも色が分かれていた。
庭の木々を見ると歌うように葉が揺れているので、これなら涼しそうだとスザクはクーラーを止めて窓を開けた。すると外から涼しい風が入り込み、寝ぼけた体を覚醒させるように優しく包んでくれる。
「気持ちいいねぇ。」
トテトテとスザクの足元にやってきてちょこんと座ったルルーシュに話しかけると、満更でもなさそうに紫色の瞳が細められた。
その様子にふっと笑ったスザクの耳にリーンと澄んだ音が届いた。
それは家に全く関心のなかった父親がある日気紛れに買ってきてスザクの部屋の窓につけたものだった。何故父親がそんなことをしたのかわからない。聞けないまま別れてしまったから。
それでもあの日感じた喜びは今も胸の奥に残っている。
「風鈴だよ。」
不思議そうに首を傾げている黒猫に教えてあげる。
そのまま窓を大きく開けて縁側に出て、裸足の足をぶらりとしながら二人並んで座る。
スザク達が起きる少し前に家政婦が庭に水を播いたらしく、木々の葉にいくつもの滴が残り、サーモンピンクの空を映しながら控え目に光っていて、濡れた土からは柔らかな匂いがした。
「クーラーがなくても結構夏もいいものでしょ?」
隣の小さな額を撫でてやれば、同意するようににゃ~という返事が返ってきた。
「あっ、そうだ!ちょっと待っててね!」
ルルーシュの体を撫でていた手を止め、突然立ち上がり部屋の中に入りゴソゴソと鞄の中を漁っていたスザクは、ややあって手に何かを持って戻ってきた。
「じゃ~ん!帰り道で、小学生がやってるの見て思わず買っちゃったんだ。」
とルルーシュに見せたのは、シャボン玉。
道に溢れた丸い球体に心惹かれたもの確かだが、それよりも普段猫らしくなく猫じゃらしにも興味がないルルーシュを喜ばせたくて買ってきたのだ。
ルルーシュはパッケージを開けるスザクを、何だ、それは?と大きな目をきょとんとさせて見ている。
「ほら、見ていてね。」
液によく付けたストローにふ~っと息を吹き込むと、ほわほわと大きな透明な球体が出来上った。それをふっと吹いてストローから離すと、ふんわりと風に揺れて宙に浮く。
もう一度液につけ、今度は軽く息を吹き込む。
するとぽぽぽぽぽと立て続けに小さなシャボン玉が出来上り、夏の妖精のように薄い藍色をした空に放たれた。
さて、ルルーシュの反応はどうだろうかとふと横を見ると、ただでさえ大きな紫色の瞳を更に大きくさせてふよふよと風に乗るシャボン玉をじっと見ている。
全身で何かを感じている様子が可愛くて仕方がないのだが、しばらくしてルルーシュがシャボン玉に気を取られてスザクの方など一切見ていないことに気が付いたスザクは静かに身を屈め、ルルーシュの顔の真横からシャボン玉を吹いてやった。
!!
酷く驚いたらしいルルーシュはぱっと後ろに後ずさり、その勢いで縁側の淵から体を傾け、そのまま下へ落ちそうになった。
「ルルーシュ!!」
慌てたスザクは超人的なスピードで庭にスライディングし、ぽてっと落ちてきたルルーシュを抱きとめた。
「ルルーシュ、大丈夫?」
に~。
驚きから解放されないらしく、黒い三角の耳をペタンコにさせたルルーシュからは幼いような声が返ってきた。
それでも無事だとわかると、スザクはほっと息を吐いて笑った。
スザクのTシャツを着た背中は濡れた土のせいでぐしゃぐしゃの泥だらけになってしまったのだが、ルルーシュに怪我がなければ何てことはない些細な犠牲だ。
「よかった。」
もう大丈夫だよ、と小さな体を撫でてやる。
ふと右手にストローを持ったままだったことに気が付き、僅かに残った液をそっと吹くと小さな球体が出来上った。
スザクの胸の上に座ったルルーシュはふと腕を伸ばし、その球体にもこもこの手で触れるとシャボン玉はパチンと弾けて消えてしまった。
その時のルルーシュの表情といったら。
らしくもなくポカンと口を開けて茫然とした顔は、もうどうしようもなく愛らしくて。
「あははは!!もう、ルルーシュ、可愛い!!大好き!!」
仰向けの体勢のまま黒い鼻にチュっとキスをして、ルルーシュを抱きしめて笑ったスザクの目に、高い空に舞い上がったシャボン玉が映った。
たとえば。
シャボン玉は一瞬で消えてしまう儚いものかもしれない。
けれど、この一瞬を共有した時は永遠になるのだろう。
そう、それは父亡き後もずっと風鈴が音を奏でるような。
きっとそんなもの。
だから。
「大好き。君がいるから僕はしあわせ。」
幸せそうに笑ったスザクと、ツンと顔を背けながらも照れたように長い尻尾を揺らす黒猫を、東の空に上った三日月が優しく見守っていた。
スザクとルル猫
初夏編
THE END
<あとがき>
収納するときは、「初夏編」ではなく「シャボン玉編」になると思います^_^;
前編でシャボン玉が出てこないから急遽タイトルを変えたのですが、やっぱり初夏って5月のイメージなんですよね。
最後の方の流れは気がついたら書いていましたw
だからお話を書くのは面白いのですが(^o^)/
多分これはコピー本を読んで下さった方は何故最後はこんな流れになって、何故スザクがあんなことを思ったのかおわかりになって下さると思います。
スザクさんも少しは学んでるんだよ!というお話でしたw(多分)
8月になったら「夏祭り編」を書きたいです。
これは半身様が喜びそうになるお話になりそうな予感がしつつも、まだまだ悩み中。
需要はどうなんだ!?
では、読んで下さりありがとうございました。
ともきが住んでいるところはまだあまり暑くない感じなのですが、皆さん夏バテにお気をつけ下さいね。