皇子と騎士犬4
・犬スザク×盲目な皇子(14歳)+AGO兄上
・ルルーシュはスザクのふわふわが大好きだと思います。(人間スザクであっても)
皇子と騎士犬4
『お兄様、上手くあめません。』
泣きそうに顔を盛大に歪めて突き出された紫色の花びらが並んだ花冠もどきを妹から受け取ったルルーシュは、間違っている箇所を丁寧に直してやる。
『ここをこうしたら、ほら綺麗だろう?だからそんな顔をしてないで、ナナリー。』
『本当です!お兄様はまほうつかいさんみたいです。』
ぱあと顔を輝かせて出かかっていた涙を引っ込めてキラキラとした純真な瞳で自分を見つめてくる妹をルルーシュはそれこそ目に入れても痛くないほどに可愛がっていた。
『ははっ、ありがとう。』
『ねっ、このお花の花ことばをご存じですか?』
いくら神童と評判のルルーシュでも花ことばまでは門外漢なので、首を振った。
『花言葉?知らないよ。ナナリーは知ってる?』
すると妹は得意げに胸を反らして答えた。
優秀な兄に教えてあげることができるのが嬉しくてたまらないのだろう。
『それはですね・・・』
「蓮華草の花言葉は『あなたは幸福です』『あなたは私の苦しみをやわらげる』だったかな。」
「・・・・・・。」
黙ったままのルルーシュに焦れたのか、スザクが異常な跳躍力でピョンとルルーシュの腕の中に飛び込んできた。
さあ、褒めてくれ!とばかりにぺろぺろと頬を舐めてくるスザクを両の腕でしっかりと抱きしめたルルーシュは、スザクの柔らかな毛に顔を埋めた。
やっぱりお日様の匂いがした。
そんな一人と一匹の様子を見守っていた帝国宰相はふうと息を吐いた。
「条件がある。」
ぱっと顔を上げたルルーシュの揺れる瞳にシュナイゼルは何も映らないことを承知の上で優しい頬笑みを浮かべた。
「一つ、その犬にきちんとした教育を受けさせること。二つ、訓練が終わるまでは二人きりで外出しないこと。いいね?」
どんな難しいことを言われるだろうと身を固くしていたルルーシュは呆気に取られたようにポカンと小さく口を開いた。
そんなルルーシュの気に抜けた表情を初めて見たシュナイゼルは思わず笑いを零した。
「家族なのだろう?・・・スザクは。」
初めてちゃんとスザクの名前を呼んでくれた兄にルルーシュは危なげに立ち上がるとスザクを地面に下ろしてから抱きついた。
「ありがとうございます。」
華奢な背中に腕を回したシュナイゼルの足元ではスザクが不満そうに二人を見上げていた。
(まだまだ私の方に比重はあるのかな?)
犬相手に天秤をかけるなんて心底馬鹿馬鹿しいと思いながらも、こんなくだらない気持ちを抱く自分も意外と悪くないではないとシュナイゼルは心の中で呟いた。
5に続く
小学生の頃、田んぼに咲く一面の蓮華草を眺めるのが大好きでした。