もじもじ皇子と広い背中シリーズ5
・年上ジノ×総受けルル
・出会い編
・なぜかまたちょっぴりシリアス風
・相変わらずキャラ崩壊気味
・読み切りなので、このお話だけでも読めます。
・後編は後日UP
こんな感じでもよろしければ!
もじもじ皇子と広い背中5 ~小さな君に出逢った日~
「えっと、ルルーシュさ、ま?」
「えっと、ルルーシュさ、ま?」
いくら声をかけても一向に返事は返ってくることはなく、ジノは心の中で年に似合わぬ困惑のため息を吐いた。
時は数時間前に戻る。
ジノは両親に連れられて上の兄三人と共にマリアンヌ皇妃に対面していた。
数いる皇妃の中で最も寵愛深いと言われているマリアンヌ皇妃との面会にようやく漕ぎ着けた両親は上機嫌で指定された離宮を訪れた。
「お前は聞かれたことだけに返事をするだけよ。後は黙っていなさい。いいわね?」
同年代の子供よりも頭一つ分大きいとはいえ、まだまだ華奢なジノの肩に何かの執念かのように念入りに磨かれた長い爪を喰い込ませながら言われた言葉にジノは頷くことしかできなかった。
指定された離宮は今誰もが憧れるアリエス離宮ではなく、マリアンヌ皇妃が皇妃としての仕事を果たすために使っているものだったが、それでもまずは十分な栄誉である。
紫色のドレスに長い黒髪を散らしてソファーにゆったりと座るマリアンヌ皇妃は幼い目から見ても美しく、ジノは一番端の席でぼんやりと皇妃を見つめていた。その時パチリと皇妃の生き生きと輝く瞳と目が合い、ジノは慌てて眼を逸らした。
「そちらの子は?」
おっとりと問いかけた皇妃に母親は微かに眉を顰めてジノに視線を向けた。
「四男のジノでございます。全く何をやらせて駄目な子で、上の兄達が優秀なだけ目立ってしまい恥ずかしいばかりで。こんな子よりも、最近のルルーシュ様のごよ」
「ジノ君、よかったらうちの子を見に来ない?凄く可愛い子だから、きっと惚れちゃうわよ。」
母親の方は一切見ず、悪戯っぽく微笑みかけられたジノは思わず頷いてしまった。
そしてジノは唖然とする家族と離れ、オレンジ色の瞳をした青年に連れられてアリエス離宮へと足を踏み入れた。アリエスは想像していたよりも大きくなく、豪奢でもなかった。むしろヴァインベルグの屋敷よりも小さいくらいだ。しかしこじんまりとした白い離宮にはどこか柔らかな空気が流れていて、慣れない雰囲気にジノは落ち着かなく身じろぎをした。
「ちょうど先ほどお昼寝から目を覚まされたから、ご機嫌はいいはずだ。入るぞ。」
青年と共に部屋に入ると、そこには天使がいた。
部屋の中央の白い絨毯の上に座ってこちらを見つめる幼子の艶やかな黒髪には光の輪がかかっていて、真っ白なほっぺたは見るからにすべすべとしている。零れ落ちそうなほど大きな瞳は鮮やかな紫色で、聡明そうな光を宿していた。
「ルルーシュ様、こちらはジノです。マリアンヌ様がこちらにお通しするように仰ったので連れて参りました。」
ジノが目の前の小さな天使に見惚れている横で青年は幼子に馬鹿丁寧に話しかけていた。
天使はジノの姿をその大きく澄んだ紫色の瞳に収めると、パタパタと部屋の大きな柱に駆け寄り、その影に隠れてしまった。
「えっと、あの・・・?」
助けを求めて青年の方を振り返るが、そこにはもう誰もいなかった。
(「どうしろっていうだ・・・。」)
とりあえず挨拶は基本だろうと、ジノは教えられた通りに膝をついて頭を垂れた。
「はじめまして。ヴァインベルグ家四男のジノでございます。この度は殿下に拝謁できましたこと、誠に身に余る光栄でございます。」
挨拶を終えても何の反応もないので、ジノは困り切って顔を上げた。
するとこちらをじっと見つめていた視線が慌てて外されたのを感じた。
まだ3歳児には堅苦しすぎたかと二コリと笑うが、大した効果はなかったようで、皇子は柱の後ろに完全に隠れてしまった。
「あ、もしかしてかくれんぼですか?」
明るく声をかけても返事はなく、ジノは途方に暮れてしまった。
こんな日もあったんだよね!
こんな日もあったんだよね!
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